Books(海外文学) - Augustrait
[提供:角川書店] 貧しいメキシコインデアンの若い真珠採取人のキノ夫婦は,大きな真珠を採取したが,盗人におそわれ不安の日が続く.ついに真珠のために宝にも勝る最愛の赤子を失う.メキシコの伝説に取材した物語――. |
生命 (Life),自由 (Liberty),財産 (Property)の三権利を自然権として主張する古典的自由主義を彷彿とさせるメキシコの伝説を素材としている.機会の平等と公正を望むキーノ夫妻には,人間の悪意からくる災いを退ける力を持っていなかった.ひたすらに純朴であった夫妻のもとに,完璧なまるみをもつ海鴎ほどの巨きさの真珠が転がり込んだ時,その財産は彼らの生命と自由を剥奪する力を招いた. '真珠の抽出物は人間の抽出物と混り合い,妙にどす黒いおりが沈殿した.すべての人々がふいにキーノの真珠とつながりを持つようになり,キーノの真珠はすべての人々の夢となり,思惑の種となり,画策,計画,未来,願望,必要,切望,渇望となり,それを阻むただ一人の人物は,ほかならぬキーノその人だったので,彼は奇妙なことにすべての人々の敵とな った'*1 ニューヨーク・ヘラルド・トリビューンの特派員になる前,ジョン・スタインベック(John Steinbeck)は煉瓦運びやペンキ塗り,果樹園労働者として辛酸を嘗めた.被搾取の立場の哀切,その悲痛な叫びは,『怒りの葡萄』『二十日鼠と人間』でなされる.幸福と展望ある未来の象徴として描かれる真珠は,それ自体に意志はないにもかかわらず,夫妻に災厄をもたらす. 富と貧困,権力者と従属者,男性による「父権」と女性による保守的「母性」等の徹底的な対立事項を,単純化して破滅の物語に据えている.その効果として,資本制以前の搾取が導いた悲劇を高らかに主張する.メキシコ先住民の伝承であることも,そのインパクトを強化している.『怒りの葡萄』で資本主義の残忍性を暴いたスタインベックは本書で,より原始的な「所有権」の側面を語っている.スタインベックの文学作品中,分量的には最短だが,� ��後感は長編にも引けを取らない. ++++++++++++++++++++++++++++++ Title: THE PEARL Author: John Steinbeck ISBN: 4042157084 『真珠』スタインベック[著] ; 大門一男訳 --角川書店,1996, , 102p, 15cm (C) John Steinbeck 1947*1 本書
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[提供:早川書房] 52歳の大学教授デヴィッド・ラウリーは,2度の離婚を経験後,娼婦や手近な女性で自分の欲望をうまく処理してきた.だが,軽い気持ちから関係を持った女生徒に告発されると,人生は暗転する.大学は辞任に追い込まれ,同僚や学生からは容赦ない批判を受ける.デヴィッドは娘の住む片田舎の農園へと転がりこむが,そこにさえ新たな審判が待ち受けていた――. |
文明の衝突のミニマムとして,価値観の衝突というものがある.ポスト・アパルトヘイトの南アフリカと,先進国の西欧都市の文化的摩擦.生理的欲望によりハイクラスから滑り落ちるデヴィッド・ラウリーの恥辱は,倫理の麻痺と隣り合わせになっている.頭脳労働から一転,不要な犬の安楽死という陰惨な仕事.利己的な自分がすすんで死んだ犬に仕えることの奇妙さを訝るが,常に傲岸不遜な姿勢を維持している. 果たして,ラウリーは人生の奇禍を受容できているのか.J.M.クッツェー(J.M. Coetzee)はそれを明瞭に描かない.ただ,文学部教授のポストにあったラウリーが学科閉鎖により准教授に降格されていた点など,恥辱の歯車は回転し始めていたことは見逃せない.女学生との不適切な関係の調査委員会の席で,見苦しい弁明をしなかった彼の疲労感が,アフリカの大地で解放感に転化する――こんな月並みな発想を超え,さらなる試練が待ち受けていることに,リアリズムの苦さがある. ハラスメントという概念それ自体,――少なくとも現時点において――先進国に特有の観念であると学ばされた.社会的評価を失い失脚するラウリーに対し,比較にならぬほど心身にダメージを受けた娘が「殺されない限りは強くなれる」と断言するくだりは,西欧とリスク許容の水準が180度異なる世界に成立する「不文律」� �ように読める. 資質は警察官であるために不可欠何ですか ++++++++++++++++++++++++++++++ Title: DISGRACE Author: J.M. Coetzee ISBN: 9784151200427 ▽『恥辱』J.M.クッツェー ; 鴻巣友季子訳 --早川書房,2007.7, , 348p, 16cm (C) J.M. Coetzee 1999
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[提供:岩波書店] 深窓の令嬢のロジーヌに,一目惚れしたアルマビーバ伯爵.早速身分を隠して熱烈な求愛開始,ライヴァルはなんと彼女の後見人!街の理髪師フィガロの加勢で,あの手この手で攻める伯爵,宝は渡さじと守る老医師,二人の恋の知恵比べはいかに.「フィガロ三部作」の第一作,痛快無比の傑作喜劇――. |
コメディ=フランセーズの重要な位置にある歌劇.17世紀以来の伝統的喜劇に,さらなるユーモアと機知に富んだ狂言回しを加え纏め上げる.喜劇『フィガロの結婚』正劇『罪の母』を併せた「フィガロ三部作」中,本作はジュゼッペ・ペトロセッリーニ(Giuseppe Petrosellini)の台本で,1782年に初演.劇作家カロン・ド・ボーマルシェ(Pierre Augustin Caron de Beaumarchais)の原作に忠実だったが,さすがにヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart)の神がかり的傑作《フィガロの結婚》の前に霞んだ. スペイン南部のアンダルシア地方,オリーブと小麦が豊かに実る自治都市セビリア.ジブラルタル海峡に通じた港湾都市は,ドンファン伝説を生み,闘牛やフラメンコを発達させた熱情の地である.中世ヨーロッパの床屋は,理容師兼外科医として市民の衛生を管理していた.瀉血,抜歯,手術.医学の発達で床屋と医師のセパレートがなされるまで,床屋は世故に長ける技術職だったに違いない.タフな床屋フィガロの活躍は,職業由来のネットワークと行動力の成果である.時計職人から宮廷貴族,国王書記官へと成り上がっていくカロン・ド・ボーマルシェ(Pierre Augustin Caron de Beaumarchais). ボーマルシェ自体,音楽と文筆の才に恵まれた好漢であったが,不遜な言動で軽蔑も買った.しかし不思議と,彼を憎からず買う人も多かったという.その諷刺は,後見人の老医師バルトロと青年貴族アルマビーバ伯爵の恋争いの滑稽さ,ブルジョア界の厚顔無恥を痛快に描き出す.本書の刊行にあたり,ボーマルシェは「セヴィリアの理髪師の失敗ならびに批判に関する温和なる書翰」と題する序言を付していた.作品に対する批判と真っ向から対立する好戦的な意思表示であり,燃焼である. ++++++++++++++++++++++++++++++ Title: LE BARBIER DE SEVILLE Author: Pierre Augustin Caron de Beaumarchais ISBN: 9784003252222 ▽『セビーリャの理髪師』ボーマルシェ ; 鈴木康司訳 --岩波書店,2008.7, 改版, 191p, 15cm (C) Pierre Augustin Caron de Beaumarchais lapse
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[提供:新潮社] ミシシッピー州に生まれ,アメリカ南部の退廃した生活や暴力的犯罪の現実を斬新で独特な手法で描き,今世紀最大のアメリカ文学者に数えられるノーベル賞作家フォークナーの作品集.大人の悪の世界と子どもの無邪気な世界を描いた『あの夕陽』をはじめ,黒人リンチ事件と老嬢の心境を捉えた『乾燥の九月』,南部人の中にくすぶる復讐心を扱った『納屋は燃える』など珠玉の8編を収録――. |
アメリカ南部ミシシッピ州に位置するヨクナパトーファ郡ジェファソン.そのような地名はない.オックスフォードをモデルにした架空の地方都市,そこで展開する黒人及びマイノリティ差別を,ウィリアム・フォークナー(William Faulkner)は描いてきた."ヨクナパトーファ・サーガ"と呼ばれる一連の作風に,ガブリエル・ガルシア=マルケス(Gabriel José García Márquez)は絶大な影響を受けた. フォークナーなくして,マルケスの『百年の孤独』における架空都市マコンドは生まれなかっただろう.同様に,おそらくスティーヴン・キング(Stephen Edwin King)もフォークナーの波紋を受けている.キャッスルロック,デリーといった架空の町を舞台とした作品を生み,他の作品でそれらの町に言及する.立体・重層的構造で文学世界にサーガを持ち込んだフォークナーの手法である.サートリス家,コンプソン家,スノープス家,マキャスリン家.フォークナーの生み出した家系の数々は,あざなえる縄のように中長編でリンクし連動している. フォークナーは1920年代から1960年代までの期間,南部の変容と未だ残る「後進性」を短編でも指摘している.小説の舞台が現実と離れた次元で関連し合うことに,人物の意識下の思考が組み合わさることで,幾何学的空間図形が世界観に形成されている.それら溶け合う渾然性を窺うことのできる短編集. 誰がゲティスバーグ演説を ++++++++++++++++++++++++++++++ Title: - Author: William Faulkner ISBN: 4102102035 ▽『フォークナー短編集』フォークナー ; 龍口直太郎訳 --新潮社,1999.4, 改版, 297p, 15cm (C) William Faulkner
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[提供:新潮社] 19世紀後半から20世紀初頭にかけて古い中国が新しい国家へ生まれ変わろうとする激動の時代に,大地に生きた王家三代の年代記.貧しく,わずかばかりの土地を大地主の黄家から借りて耕す王龍は,黄家の奴隷の阿蘭を嫁にもらうことになった.働き者の阿蘭を得たことがきっかけとなって王龍の運が上向き,子宝にも恵まれて多くの土地を手に入れ,ついには黄家の土地をも買収してしまう――. |
パール・バック(Pearl S. Buck)の愛娘は,フェニルケトン尿症後遺症による重い知的障害とともに生きた.宣教師の父とアメリカから中国へ渡った少女時代のバックは,アメリカのランドルフ・メイコン女子大学に入学するまで中国大陸を踏め締めていた.アングロ・サクソン「責務論」(Manifest Destiny)での宣教師とその家族という立場であったが,少なからぬ中国人からは敵性外国人と看做され,一家は並々ならぬ襲撃を受けたこともある.「いつまでたっても大人にならない子供」と作品の中で名づけられた知的障害の女児には,固有名詞すら与えられていないが,物語に占める存在意義は大きい.少女時代のバックではなく,わが娘と状況を共有する女児が登場してきた理由とは何だったのか. 朝の煎茶を父に差し出すことも自重せねばならない貧農・王龍の刻苦勉励.時勢をみる才覚をもった息子たちは,放蕩家,商人,軍閥と各自の資質を生かす道を切り開く.厳格な家父長制による強圧のもと,旧来の価値観が西欧の自由主義及び,革命思想への傾斜が顕著となる時代へと変転する.その符牒として機能するのが王一 族であり,血族の連帯を「土」に託す漢民族の性情にも繋がる.一代で財を成した王龍の遺言は,所有地を手放してはならないというものだった.人間は結局,土から与えられ土に還るもの――王龍の哲学を息子たちは意に介さない.土地に縛られることを厭う新生の価値観が,動乱期にある中国には育っていたことが背景にある.バックが暮らした安徽省北部,また金陵大学農学院教授ジョン・ロッシング・バック(John Lossing Back)との結婚生活の舞台,国民政府の首都・南京での体験は,国民革命の成立から南京国民政府の樹立,中ソ紛争から満州事変へ至る軍事的緊張の中での国民の生活を観察する冷静な分析眼となって育まれた.バックの創作は,重要なものは1930年代に集中しているとされている.1940年代以降の著作も多いが,東西の理解と女権拡張の社会活動が彼女の経歴の中で存在感を高めているのは確かだ. 知的障害を抱える王龍の娘は,家族の庇護の下で52歳まで生きた.本書における「土の家」で寿命を全うできた"白痴"の娘は,心優しい奴隷娘や血縁者の努力で保護された.それに対し,バックの娘は,中国で9年間母親の手で育てられた後,ニュージャージーの養護施設に入所させられている.王一族の男性が離散し,土に触れる必要 もなくなるのに対し,女性は家から離れることはできず,小さくなった土地をひっそりと守護する形を取る.土地から切り離され,回帰することもない人々の心から,連帯は姿を消すのである.何世代にもわたる家族員の生産が可能であれば,相互扶助の仕組みで介護のケアも可能であったかもしれない.本書を通じて,バックの苦い悔恨が伝わる部分である.金銭に執着し,権力を掌握し,自由を求め欧米に亡命する男性を王一族は生んだ.彼らを支える女性のありようは様々で,忍従や依存を強いられる姿も数多い.それも中国の土着的な精神を累々と伝える栄枯盛衰の一側面なのだが,高い自立精神の持ち主で,医学の徒・美齢が王淵に寄り添う終章.若い二人の希望に,一つの安らぎが横たわる.おそらくそれは,絆で結ばれた未� ��の家族をもち得る可能性から兆している. 拒食症のy ritmica ++++++++++++++++++++++++++++++ Title: THE HOUSE OF EARTH Author: Pearl S. Buck ISBN: 9784102099018,9784102099025,9784102099032,9784102099049 ▽『大地』パール・バック ; 新居格訳 ; 中野好夫補訳 --新潮社,1996, 改版, 4冊, 16cm (C) Pearl S. Buck 1931
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[提供:ソニー・マガジンズ] "ジョン・ミルトン&アソシエイツ",ケヴィン・テイラーはマンハッタンにオフィスを構える刑事訴訟では負け知らずの超一流弁護士事務所の一員となった.そこでは,訴訟内容はもちろん,報酬も何もかもが申し分なかった.だが,すべてが順調に行くなかで,妻ミリアムの変貌が,ケヴィンの心に暗い影を落としていく.そして同時に,事務所の最高経営責任者ジョン・ミルトンに対する疑念.彼には人々の心に潜む邪悪さがすべてわかっていた――. |
リーガル・サスペンスとオカルトの両刃が,ともに切れ味の悪いまま構成されている読後感.バチカンの聖人に列せられる候補者の審議では,意図的に対抗馬を擁立して議論した.相対的に高徳が評価・認定される必要があるということだ.それを「悪魔の弁護人」と呼んだ.転じて,ビジネスの世界では,容認しがたい提案の泣き所を突く社員の「役割」を,やはり悪魔の弁護人と呼ぶ. 悪魔は,人の最も脆弱なポイントを衝く.本書では,悪魔的な弁護士ではなく悪魔そのものが弁護士を生業とし,悪人を養成して社会に放つ.悪魔の騙る名が「ジョン・ミルトン」とは,陳腐にもほどがある.聖書と十字架でミルトン殺害に成功したと見えた若い弁護士ケヴィン・テイラーは,野心を巧みに刺激され,妻の変調に心を乱される . 社会的にはミルトンは「一般人」であり,テイラーには第一級殺人による有罪判決が下される.獄中で彼が見たのは,自在に形を変え憑依する悪魔の姿.その目を覗き込んだとき,テイラーは諦念に囚われたことだろう.迫真の場面のはずだが,訴求力がいまひとつで印象は薄い. ++++++++++++++++++++++++++++++ Title: THE DEVIL′S ADOVOCATE Author: Andrew Neiderman ISBN: 4789712532 ▽『悪魔の弁護人』アンドリュー・ニーダーマン ; 庭植奈穂子訳 --ソニー・マガジンズ,1998.3, , 350p, 20cm (C) Andrew Neiderman 1990
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[提供:福武書店] この世で最初の人間,アダムとイヴの書いた日記が発掘された…「アダムの日記」「イヴの日記」それぞれに描かれた,アダムから見たイヴ,イヴの目に映ったアダム.そのすれ違いぶり,ものの見方の違いが笑いを誘う.おかしくて,最後にはほろりとさせられる,マーク・トウェインの本領が発揮された作品――.原書からのイラスト満載. |
普段,男女でものの見方がかくも違うのかと,衝撃を受けることは多い.「男と同じような形態を取っているから,理解し合えるような錯覚を与える厄介な『女』という存在」とした渡辺淳一のようなスタンスはどうかと思うが,意見の共有の難しさを孕みながらも,惹かれ合うという点では正しい.困難というより,ほとんど意味不明でさえある.ユダヤ教,イスラム教,そしてキリスト教の聖典あるいは啓典では,ヘブライ語で「土」「人間」を意味するアダムと,「生命」を意味するイヴは56人の子をもうけ,地上に人口を満たす使命を果たした.蛇の唆しにより,禁じられていた「善悪の知識の実」を食したアダムとイヴは,霊的な死と肉体的な死を体験することになる. ヤハウェは,アダムとその子孫の男には労働の苦し� ��を,イヴとその子孫の女には出産の苦しみを,人間を唆した蛇には地を這う生涯を与えたという.『テモテへの手紙一』2:14,『コリントの信徒への手紙一』15:45によれば,アダムは930年生きて死んだがイヴの最期は不明.この2人がそれぞれ秘密の日記をつけていたならば,何に困惑し,求め,得られず葛藤したのか.庶民的作家としてのマーク・トウェイン(Mark Twain)の創造力が羽ばたく.アダムとイヴの日記は絵日記となっており,1904年にハーパー・アンド・ブラザーズ社から出された「アダムの日記」と,1906年の「イヴの日記」では,画風がまったく異なる.原書から転載された挿絵は,アダムのパートでは単純で素朴だが,イヴのものでは緻密で繊細.エンドレスなおしゃべりの相手を務めさせられることにうんざりするアダムの解釈と,アダムに気を遣わせないよう配慮して喋り続けていたイヴの自覚は食い違う. 齟齬は日記を照合しなければ判らない.つまり,男女としてのアダムとイヴは,その違いが永遠に判らないのである.「アダムの日記」が果てしなく愚痴っぽいのに対し,「イヴの日記」は文学的で美しいのには苦笑.トゥエインの没後100年にあたる2010年,5,000ページ� �わたる本人の手稿が「自伝」として刊行され始めた.全4巻になる予定だという.妻の死後,トゥエインは「イヴの日記」を著した.イヴに先立たれ,長い年月を孤独に過ごしたアダムは悟る.本書最後の一行が何より重い.フェミニストの目覚めを窺わせる回顧は,不完全な存在同士の相補と衝突の大儀であろうか. ++++++++++++++++++++++++++++++ Title: THE DIARY OF ADAM AND EVE Author: Mark Twain ISBN: 9784828857107 ▽『アダムとイヴの日記』マーク・トウェイン ; 大久保博訳 --福武書店 ,1995.2, , 255p, 16cm (C) lapse
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[提供:岩波書店] 自然から享けた生命を人為的に奪い去る社会制度=死刑の撤廃のために,若き日のユーゴーが情熱を傾けてかきあげた作品.死刑の判決をうけてから断頭台にたたされる最後の一瞬に至るまでの,一死刑囚の肉体的・精神的苦悶をまざまざと描き出して,読者の心をも焦躁と絶望の狂気へとひきずりこむ――. |
断頭台に上る無名死刑囚の独白.彼の犯罪歴は一切伏せられ,家族関係も最小限の描写に留まる.「終身徒刑になるくらいなら死刑された方がまし」と,判決時には憮然としていた男が,執行日が近づくにつれ周章狼狽,恩赦を乞うて逡巡する.その内的世界の動揺と狂気は,苦悶に収斂されて克明に文章化されていく. 1829年,ヴィクトル・ユゴー(Victor-Marie Hugo)28歳のときに著した本書には,貧窮と挫折の連続の中にロマンティック運動の旗手として出発した"香り"がある.18世紀に拷問を廃止し,死刑の廃止を19世紀中に目指すとしたユゴー.死刑執行人アンリ=クレマン・サンソン(Henry-Clément Sanson)も死刑の廃止を切に願っていたが,フランスの死刑制度が廃止されたのはわずか29年前の1981年.人間の生命を蹂躙する側面から,死刑に異を唱えたユゴーと,誰かが手を穢さなければ成立しない非人間的行為に抵抗したサンソンは,血を吸い慟哭するギロチンを叩き潰すことを夢見た. 本文の後に序文が収録されており,奇異な感じを受ける.本文は無名者として発表され,序文がユゴー名義で刊行された順序に倣っている.実質上,序文は著者による「あとがき」であり,司祭と国王と死刑執行人に支えられた社会の殿堂において,神々の声・国王の声・死刑執行人の声を順次取り払うべきとする「解説」である. ++++++++++++++++++++++++++++++ Title: LE DERNIER JOUR D'UN CONDAMNE Author: Victor Hugo ISBN: 4003253183 ▽『死刑囚最後の日』ユーゴー作 ; 豊島与志雄訳 --岩波書店,1950.1, , 147p, 15cm (C) lapse
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[提供:新潮社] イギリスの片田舎の古い貴族屋敷.そこに,両親と死別してひっそり暮す幼い兄妹.二人の家庭教師として赴任してきた若い女性が,ある日見たのは,兄妹を悪の世界に引きずり込もうとする亡霊の姿だった――.典型的な怪談のシチュエーションを用いながら,精緻な心理描写と暗示に富んだ文体で人間の恐怖を活写した,"心理主義小説"の先駆者ジェイムズの代表作である. |
ひねりの利いた恐怖のエピソードは,人間の精神の壁に忘れがたい螺旋を刻みつける.後に,「意識の流れ」と名づけられる心理主義のトレンドの先駆者とみなされるヘンリー・ジェイムズ(Henry James).ドグマに陥る精神の脆さ,恐怖と不安の狂おしい示威などを,不可解な要素を孕む内面描写の作品に錬り込んでいる. 声もなく立つ亡霊の素性は不明.20歳の小娘たる家庭教師の内的混乱も一元的には理解できない.しかし,彼女の語りが真実であるならば,生徒である男児が「心臓の鼓動を止めた」ことは事実.不明瞭な事象が蓄積されるなかで,恐怖だけが物語と読み手に食い込んでいく.子どもの魂を奪う悪霊は,デンマークの民間物語詩「魔王」を髣髴とさせる怪異. ジークムント・フロイト(Sigmund Freud),フランツ・カフカ(Franz Kafka),ジェイムズ・ジョイス(James Augustine Aloysius Joyce),ウィリアム・フォークナー(William Cuthbert Faulkner)に先んじた魔術的ロマンス.その使い手であったジェイムズの技法に,現代心理主義も学ぶところは大である. ++++++++++++++++++++++++++++++ 原題: THE TURN OF THE SCREW 著者: Henry James ISBN: 9784102041024 ▽『ねじの回転』ヘンリー・ジェイムズ ; 蕗沢忠枝訳 --新潮社,1962, , 248p, 15cm (C) lapse
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[提供:早川書房] 「私がヴァンパイアとなったのは,25歳の時,1791年のことだ…」彼はそう語りはじめた.彼の前にはテープレコーダーが置かれ,一人の若者が熱心に彼の言葉に聞き入っている.彼は語る.アメリカからヨーロッパへ,歴史の闇を歩き続けた激動の200年間のことを.彼をヴァンパイアとした"主人"吸血鬼レスタトのこと,聖少女クロウディアとの生活,東欧の怪異,訪れた破局――.伝説の存在,吸血鬼への驚愕すべきインタヴュー. |
1766年に生まれた青年ルイは,25歳で吸血鬼に転生し,加齢の法則に逆らう永遠の生命を得た.イギリス発祥の産業革命,アメリカ独立戦争,フランス革命,南北戦争,ロシア革命,2度の世界大戦,冷戦の終結――20世紀に至るまで,すべての世界情勢を陰から眺めてきた.アン・ライス(Anne Rice)の生み出した超常的存在.クロニクルを現代の青年に妖しく語るルイは,永遠の時間と美貌を手にした代償に,陽光を失い,永劫の孤独を生きるエピタフ. 肉体と魂が不滅になれば,人間だった「モノ」は魔物となり,人生観をいかに獲得するのか.それは,常人には想像すら及ばぬ領域.幼女クロウディアを行き掛かり上,眷属に加えてしまったレスタトとルイは,人間性を奪い去る業の深さを思い知ることになる.人間性には,美しさと醜悪さの二面性がある.太陽光に曝されるか,頭部を完全に破壊されない限り,不死であり続ける吸血鬼.だが完全無欠にはなりえない.人間を超越した肉体に精神の脆弱さが追随できず,衰滅を辿る悲劇性にライスは目を向け,インタビュアーの青年が憧れる魔の領域の酷薄さを示す. 世界観は幻惑的だが,耽美性の域に到達するほど妖艶ではない.チープさを残している.続編『ヴァンパイア・レスタト』以後,ヴァンパイア・クロニクルズは,同性愛傾向を強め吸血鬼の自伝要素を維持している.人間を「やめる」悲哀を味わい,外縁から人間世界を眺めることができる異世界の住人の優越感と劣等感.その醍醐味は,シリーズ初作である本書が最も画然としている. ++++++++++++++++++++++++++++++ Title: INTERVIEW WITH THE VAMPIRE Author: Anne Rice ISBN: 9784150404642 ▽『夜明けのヴァンパイア』アン・ライス ; 田村隆一訳 --早川書房,1987.
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