[提供:岩波書店]
深窓の令嬢のロジーヌに,一目惚れしたアルマビーバ伯爵.早速身分を隠して熱烈な求愛開始,ライヴァルはなんと彼女の後見人!街の理髪師フィガロの加勢で,あの手この手で攻める伯爵,宝は渡さじと守る老医師,二人の恋の知恵比べはいかに.「フィガロ三部作」の第一作,痛快無比の傑作喜劇――. |
コメディ=フランセーズの重要な位置にある歌劇.17世紀以来の伝統的喜劇に,さらなるユーモアと機知に富んだ狂言回しを加え纏め上げる.喜劇『フィガロの結婚』正劇『罪の母』を併せた「フィガロ三部作」中,本作はジュゼッペ・ペトロセッリーニ(Giuseppe Petrosellini)の台本で,1782年に初演.劇作家カロン・ド・ボーマルシェ(Pierre Augustin Caron de Beaumarchais)の原作に忠実だったが,さすがにヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart)の神がかり的傑作《フィガロの結婚》の前に霞んだ.
スペイン南部のアンダルシア地方,オリーブと小麦が豊かに実る自治都市セビリア.ジブラルタル海峡に通じた港湾都市は,ドンファン伝説を生み,闘牛やフラメンコを発達させた熱情の地である.中世ヨーロッパの床屋は,理容師兼外科医として市民の衛生を管理していた.瀉血,抜歯,手術.医学の発達で床屋と医師のセパレートがなされるまで,床屋は世故に長ける技術職だったに違いない.タフな床屋フィガロの活躍は,職業由来のネットワークと行動力の成果である.時計職人から宮廷貴族,国王書記官へと成り上がっていくカロン・ド・ボーマルシェ(Pierre Augustin Caron de Beaumarchais).
ボーマルシェ自体,音楽と文筆の才に恵まれた好漢であったが,不遜な言動で軽蔑も買った.しかし不思議と,彼を憎からず買う人も多かったという.その諷刺は,後見人の老医師バルトロと青年貴族アルマビーバ伯爵の恋争いの滑稽さ,ブルジョア界の厚顔無恥を痛快に描き出す.本書の刊行にあたり,ボーマルシェは「セヴィリアの理髪師の失敗ならびに批判に関する温和なる書翰」と題する序言を付していた.作品に対する批判と真っ向から対立する好戦的な意思表示であり,燃焼である.
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Title: LE BARBIER DE SEVILLE
Author: Pierre Augustin Caron de Beaumarchais
ISBN: 9784003252222
▽『セビーリャの理髪師』ボーマルシェ ; 鈴木康司訳
--岩波書店,2008.7, 改版, 191p, 15cm
(C) Pierre Augustin Caron de Beaumarchais lapse
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