2012年5月31日木曜日

マスコミはなぜイラク人65万人死亡の報告を無視するのか? 06/10/13記事: マスコミに載らない海外記事


アメリカのマスコミは、アメリカの戦争によるイラク人犠牲者の数が655,000人だと推測する新たな科学的調査に対して、事実上沈黙を保っている。この研究は、マサチューセッツ工科大学の資金援助で、ジョーンズ・ホプキンス大学のブルームバーグ公衆衛生学部によって行われ、水曜日イギリスの医学雑誌ランセットのウエブ・サイトに掲載された。

この研究は、アメリカ侵略と占領の結果として亡くなったイラク民間人と軍人の数の唯一系統だった推計を、アメリカと、世界中の人々の前に明らかにしたものだ。

マスコミ報道の再検討や、アメリカが支援しているイラク政府による集計に基づくこれまでの推計とは異なり、ジョーンズ・ホプキンスの研究は、イラク人医師達がしばしば大変な生命の危険を冒して、イラク中のおよそ2,000家族に面接し、標準的で広く用いられている統計的手法を用いて行われ、戦争と占領による犠牲者数の客観的な推計に至ったものだ。報告されている死亡の大部分は死亡証明書によって裏付けられている。

研究は、95パーセントの確度で、侵略以来のイラクにおける「過剰死亡」人数、つまり侵略前の死亡率をもとに想定される死亡者数を超えて亡くなった人々の数は、393,000人から943,000人の間であると結論づけている。655,000人という数値はもっともあり得る数値として提示されている。これは何と驚くことに全イラク人口の2.5パーセントだ。

研究者達は更に、死亡のうちおよそ600,000人は、銃撃、空襲や爆弾を含む何らかの形の暴力行為によるものだと推測した。彼らは、少なくとも31パーセント、つまり186,000人の非業の死を、アメリカと多国籍軍が直接ひきおこしたと結論している。

侵略以来、非業の死をを遂げた人々の内の約336,000人、あるいは56パーセントは、銃撃の傷が原因で亡くなった。この研究は、イラクにおける非業の死の数が、侵略以来、毎年着実に増加していることも発見している。2005年6月から2006年6月の期間に、死亡率が侵略以前の水準と比較してほぼ四倍に増加していることを研究者達は見いだした。


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この研究の信頼性に対する正当な疑念などありえない。ランセットというのは、世界でも最も古く、最も権威ある、論文審査をともなう医学専門誌の一つだ。ジョーンズ・ホプキンス大学公衆衛生学部は世界最大で、いつもアメリカ合衆国における最高位の公衆衛生学部としてランク付けされている。雑誌論文は刊行前に、その分野における四人の独立した専門家によって、精読され承認される。

仮に、少ない方の推計、393,000人のイラク人が亡くなっているというものが正しいのだと考えた場合でも、報告の重要性を買いかぶることは容易ではない。アメリカのイラク介入が、中東のみならず、世界中、そして何よりも、アメリカ合衆国そのものに対する壮大な政治的な意味合いをもった、歴史的な規模の社会的、人道的大惨事を生み出したことをこの報告は明らかにしたのだ。

あらゆる客観的な基準からして、この報告は、わが国の全主要新聞紙の一面での報道と、テレビ・ニュース番組における大規模な討論とレポートに十分値するものだ。それなのにアメリカのマスコミの反応は、事実上報告を無視しており、報道を内部ページのニューズ記事に限定して、無批判的な、政府や軍当局者が報告を「信ぴょう性がない」してはねつけている裏付けのない発言を報道している。

この話題を覆い隠すことによって、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストは特に大きな役割を演じた。水曜日にこれらの新聞に掲載された元の記事は、内側のページに格下げされていた。: ニューヨーク・タイムズの場合は8ページ、ワシントン・ポストの場合は12ページだ。

掲載した記事では、同じチームが公表したイラク人の死亡者数にかかわる以前の報告は、「科学的な手法を用いてイラクの死亡率を推定している唯一のものである。」と書いてジョーンズ・ホプキンス研究の科学的な妥当性を保証しながら、ワシントン・ポストは、この話題を、後方のページに隠すことに決めたのだ。科学者が用いた方法「クラスター・サンプリング」を、「飢饉や自然災害の後で、死亡者数を推定するのに用いられる」と新聞は書いた。


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一人の記者が水曜日のホワイト・ハウス記者会見でこの件を取り上げたにもかかわらず、マスコミが最低限しか報道しない状況は木曜日にも継続した。ブッシュ大統領は、信ぴょう性が無いと言って、報告を馬鹿にしたようにはねつけた。記者会見に居た他の記者の誰も大統領にくってかかったり、関連質問をしたりはしなかった。

ブッシュの言明には、様々な支持者やら、戦争を仕組む連中が同じように、ジョーンズ・ホプキンス研究の死亡者数をはねつける声明が続いた。イラクにおけるアメリカ軍の司令官ジョージ・ケーシーは、わざわざ報告など読んだりはしないと認めたが、「まったく大した信頼性などない」と結論づけた。イギリス首相トニー・ブレアのスポークスマンは、655,000人が殺害されたという数字は 「まるで正確などとは思えない」と述べた。イラク政府の役人も同様に、数字は「誇張されている」と宣言した。

木曜日ニューヨーク・タイムズもワシントン・ポストもジョーンズ・ホプキンス報告についての社説は書いておらず、報告やブッシュ政権の対応についての関連記事すらない。

主流マスコミには、報告の信用を傷つけようとする政府の企みに対して異議を申し立てるものは皆無だ。逆に、木曜日の最小限の報道は、主として、ブッシュ、ケーシー、ブレアやイラク人手先政権の声明を報道することにあてられた。例えば、ロサンゼルス・タイムズは、内部のページで、「イラク人が、600,000人の戦死という主張に意義を唱えている」という記事を書いてイラク政府による発言を報じている。同紙は、自身で調査を行い殺害されたのは50,000人だという数字になったと述べて、大合唱に加わっている。

報告の信用を傷つけようという試みは、いかなる事実なり方法論的な論議によっても裏付けられはていない。政権とその支持者達は、正当にも、裏付けのない主張をいくらしてもマスコミは決してかみつくまいと読んでいるのだ。


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この研究の共著者であるリー・ロバートは、木曜日のDemocracy Now! ラジオ放送インタビューで、研究者達が用いたクラスター調査手法は「政府が良く機能していない極めて貧しい国々や、戦時に、死亡数を測定する標準的な方法です」と述べた。国連とアメリカ政府いずれも、コソボとアフガン戦争後に、死亡数を決定するのにこの方法を用いたと彼は指摘した。彼は言う。「最も皮肉なことは、アメリカ政府毎年何百万ドルも費やして、NGOや国連職員に戦時や災害時の死者数を数えるためにクラスター調査をする方法を訓練しているのです」

沈黙することによって、マスコミは、またもや政府を見習っている。2005年12月の記者会見で「おおよそ」30,000人のイラク人が、2003年3月のアメリカ侵略以来殺害された(ばからしいほど内輪の推計だ)といったブッシュの軽はずみな言葉にかみつかなかったのと同様、ブッシュによる無知で血も涙もないジョーンズ・ホプキンス報告の無視に、マスコミがかみつくことはなかった。

企業所有で、企業に支配されているマスコミは、イラクで何が起きているかという真実をアメリカ国民知って欲しくないために、この話題を覆い隠したのだ。

戦争開始以来、一貫してそうしてきたように、彼らはこの真実を隠したがっている。なぜなら、彼らはイラクにおける大規模な戦争犯罪の片棒を担いでおり、アメリカ軍による殺りくを支持し続けているからだ。

ジョーンズ・ホプキンス報告は、アメリカ合衆国によってイラクで引き起こされた死亡と破壊の途方もない規模を暴露して、大量破壊兵器とイラク-アル・カイダの絆というものから、現在の「自由と民主主義」のための戦争という主張にいたるいつわりの主張や、「テロに対する戦争」という重要な欺瞞で、国民を欺き、戦争を正当化しようとする企みによって打ち立てられた嘘の殿堂を粉みじんにするものだ。

報告は、軍によるかつてない検閲の受容と、自己検閲と石油と中東における地政学的な支配を求める帝国主義者の戦争を取り繕うための意図的な虚報とを結びつけている、マスコミそのものの責任を必然的に際だたせている。


ランセットで発表されたジョーンズ・ホプキンス研究によって明らかにされた大量殺りくの規模は、アメリカのあらゆる支配エリート、共和党に劣らず民主党も含む二政党、更に全ての公的機関、中でも特に卑しむべき役割を演じてきたマスコミに対する告発だ。

企業、政治、マスコミといった支配体制側が恐れているのは、労働者の社会的条件と民主主義的権利に対する情け容赦のない攻撃への高まる怒りと結びついた、イラクと世界中におけるアメリカ帝国主義の犯罪に対する増大しつつある人々の反感という、一触即発の危険をはらんだ社会的、政治的な雰囲気だ。政治制度が丸ごと国民の目の前にさらされ、疑われている。このような過程は、必然的に革命的な結果をもたらすだろう。

上記は、下記の翻訳。

ジョー・ケイ、バリー・グレイ著  ワールド・ソーシャリスト・ウェブ・サイト(WSWS) 2006年10月13日

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日本のマスコミ、当然、宗主国に、右へならへ!

期限切れ食品販売騒ぎは追うが、期限切れの植民地政治には触れない。

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以下も参照。:

New study says US war has killed 655,000 Iraqis

[2006年10月12日]

Provocative US attack on Shiite militia in Iraq

[11 October 2006]

US casualties soar as military intensifies violence in Baghdad

[6 October 2006]

追記 09/02/12 ちきゅう座のサイトに、大変に興味深い記事がある。いかにも正義の味方のような名前、振りをしていても、所詮は、同じ穴のムジナ?

戦争屋に貢献するヒューマン・ライツ・ウォッチ



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